PC/SC(Personal Computer/Smart Card)は、スマートカード(ICカード)とパソコンまたは他のデバイス間の通信を標準化するためのプロトコルとAPI(アプリケーションプログラミングインターフェイス)のセットです。この標準により、さまざまなスマートカードリーダーやカードが互換性を持って動作できるようになります。
以下にPC/SCの概要を説明します。
1. PC/SCの役割
標準化:
スマートカードとリーダーの間の通信や操作を統一された方法で扱う。
- 抽象化:
開発者はPC/SC APIを使用することで、特定のハードウェアやカードの詳細を気にせずにプログラムを開発できる。 - 互換性:
異なるメーカーのリーダーやスマートカードを同じソフトウェアで動作させることが可能。
2. PC/SCの構成要素
- PC/SC Service:
オペレーティングシステム上で動作するバックグラウンドプロセス。スマートカードリーダーの管理やカードの検出を行う。 - スマートカードリーダー:
スマートカードを読み取る物理的なデバイス。 - PC/SC API:
開発者が使用するプログラミングインターフェイス。Microsoft Windowsではwinscard.dll
として提供されており、以下のような関数が含まれます:SCardEstablishContext
: コンテキストの確立。SCardListReaders
: 使用可能なリーダーのリストを取得。SCardTransmit
: スマートカードにデータを送信。
- プロトコル:
スマートカードとの通信に使用されるプロトコル(例: T=0, T=1)。
3. 主な用途
- 認証:
スマートカードを使ったログインやユーザー認証。 - 電子署名:
スマートカードを利用してデジタル署名を作成。 - 暗号鍵の管理:
暗号化キーをスマートカード内で安全に管理。 - 支払い:
例えばクレジットカードや交通系ICカードなど。
4. PC/SCのサポート状況
- Windows:
PC/SCはWindows標準でサポートされています。Smart Card Service
(スマートカードサービス)がその中心。 - macOSとLinux:
PC/SCはこれらのOSでもサポートされていますが、Linuxでは主にpcsc-lite
ライブラリが使用されます。
5. PC/SCのメリット
- ハードウェアやOSの違いを吸収するため、アプリケーションの移植性が高い。
- スマートカードの標準機能を簡単に利用可能。
PC/SCは、セキュリティが重視される分野や電子取引が増加する中で、非常に重要な役割を果たしています。開発する際には、この標準を活用することで、さまざまなリーダーやカードに対応した柔軟なシステムを構築できます。